タイ南部の電力を支える共同ガス開発で、マレーシアとの新しい契約が発表された。中部では、チャオプラヤ川東岸から海へ水を流す、950億バーツの治水・灌漑設備の整備計画が閣議で承認されている。
東部の住宅市場については、販売の回復をコンドミニアムがけん引する一方、戸建てなどの在庫消化には時間がかかる地域もある。今週は、事業を支えるインフラと住宅需要に加え、輸入スクラップの検査、果物の流通、行政手続きの動きを整理した。
1|タイ・マレーシア共同ガス開発で35年の新契約。既存鉱区と周辺の探鉱を一体に
タイの石油・ガス開発会社PTTEPと、マレーシアの国営石油会社PETRONASのグループは9月14日、両国の共同開発区域にあるA-18-01鉱区の新たな生産分与契約を発表した。
共同開発区域は、タイ湾南部で両国が海底資源を共同管理する海域だ。生産分与契約とは、企業が開発費を負担し、生産による収入から費用を回収したうえで、利益を管理主体と分ける方式を指す。
新契約は2026年1月1日にさかのぼって35年間有効となり、従来のA-18に隣接する探鉱区域を加える。旧契約の満了日は2029年4月20日だった。既存のガス田の操業と、その周辺での開発を続ける枠組みが整った。
PTTEPによると、新鉱区の生産ポテンシャルは日量3億〜4億標準立方フィート。ガス量を一定の温度・圧力に換算した単位で、両国へ等しく供給する想定だ。タイ向けの分は同国の天然ガス需要の約4%に相当し、南部の発電燃料に使う。契約期間を確保したうえで、探鉱と追加開発を通じて供給を維持していく計画となっている。
出典: PTTEP「Block A-18-01の生産分与契約」、PETRONAS「New Block A-18-01 PSC」(ともに2026年9月14日、英語)
2|チャオプラヤ川東岸の治水・灌漑設備に950億バーツ。運河を広げ、海への排水を増やす
政府は9月15日、「チャオプラヤ川東岸下流部の灌漑システム改良事業」を承認した。事業枠は950億バーツで、2027〜2032年度の6年間に実施する。約8割を借り入れ、残りを各年度の予算で賄う構成だ。
対象はアユタヤ、パトゥムタニ、バンコク、サムットプラカーンなど8都県。主要な運河22本、延長約460キロメートルと、水を調節する施設23か所を整備する。
最初の段階では、土地利用上の問題が少なく、工事に着手しやすい南北方向の運河を優先して掘り広げる。北から来る水を受け入れ、タイ湾へ直接流す能力を増やす考え方で、ラピパット運河の受け入れ能力を毎秒210立方メートルから400立方メートルへ高める計画だ。乾季に利用する水の貯留も目的に含まれる。
工場や住宅、物流施設が集まる中部では、施設を囲う対策と、地域全体から水を排出する能力の両方が関係する。今回の承認は後者を長期的に整えるもので、効果が現れる時期は各工区の完成による。今季の洪水への対応と、6年間の設備投資は時間軸を分けて把握したい。
出典: タイ政府広報局「チャオプラヤ川東岸下流部の灌漑システム改良事業」(2026年9月15日、タイ語)
3|EECの住宅販売は回復。チョンブリではコンドミニアムと戸建てで売れる速さに差
政府住宅銀行傘下の不動産情報センター(REIC)は9月16日、東部経済回廊(EEC)の第2四半期の住宅市場調査を公表した。対象は、チョンブリ、ラヨーン、チャチューンサオの3県で販売中の住宅プロジェクト。期間中の販売戸数は前年同期比23.2%増となった。
回復をけん引したのはチョンブリのコンドミニアムだ。同県のコンドミニアム販売戸数は74.5%増えたのに対し、戸建て・タウンハウスなどの分譲住宅は2.7%増だった。REICは、パタヤなどの観光関連需要や外国人の購買を背景に挙げている。
在庫の消化にも差がある。新しい物件が供給されず、調査時点の販売ペースが続くという条件では、チョンブリのコンドミニアムの売れ残りを販売するのに約31か月、戸建てなどには約54か月かかる計算だ。
同じ東部でも、ラヨーンの戸建て市場ではプルワックデーンの販売戸数が30.4%減、ニコムパッタナーは56.7%増と、地域によって方向が分かれた。工業地域の住宅を調べる際は、東部全体の販売回復に加えて、勤務先からの距離や住宅の種類に近い市場を選んで比較する方が、需要の実態を把握しやすい。
出典: REIC「EEC住宅市場・2026年第2四半期調査」(2026年9月16日、タイ語、pp.1–2)
4|レムチャバン港で輸入スクラップに電子廃棄物。搬入先や資金の流れへ調査を広げる
政府は9月18日、レムチャバン港で14日に実施したコンテナ検査の結果と、その後の調査方針を公表した。対象10個のうち9個を開封し、米国から届いた6個に電子廃棄物の混入を確認したという。これらはアルミニウムのスクラップとして申告されていた。
一方、ポーランド、英国、ニュージーランドからの3個は、申告内容が正しく、混入も確認されなかった。金属原料として再利用するスクラップと、電子廃棄物を含む貨物を、実物の検査で区別している。
調査は輸出者、タイ側の輸入者、国内の搬入先、資金の流れへ広がる。政府が示した約825個という数字は、過去の輸入履歴を調べる対象の規模であり、すべての違反が確定した数ではない。
再生資源を扱う取引では、輸入申告の品名と実際の内容物が一致するかが焦点になった。今回の調査範囲は港での開封にとどまらず、国内で誰が受け入れ、どのように処理するかまで及んでいる。
出典: タイ政府広報局「輸入電子廃棄物の検査結果と調査範囲の拡大」(2026年9月18日、タイ語)
数字で見る|66%
中国・南寧の果物卸売市場Higreenが、2026年1〜8月にASEANから輸入した果物のうち、タイ産が占める割合だ。タイ商務省国際貿易振興局(DITP)が9月19日、前日の市場訪問に伴って公表した。
ASEANからの輸入約16万トンに対し、タイ産は10万5,000トン超で、量では前年同期比14.88%増。次いでベトナム産が5万1,500トン、32.2%となっている。
Higreenには卸売業者が2,500以上、買い付けの会員が2万以上あり、売り場のほかに配送、冷蔵、電子商取引の区画もある。タイ産果物を中国の消費者へ届ける、流通の途中にある拠点だ。タイ側は今回の訪問で、継続的な輸入や販売促進への協力を求め、特にドリアンの品質管理を説明した。
66%という比率は、一つの卸売市場でのASEAN産果物の内訳である。中国全体の市場シェアや販売価格とは区別し、タイ産が大きな割合を持つ具体的な販路と、そこで輸入量が伸びている状況を示す数字として読める。
出典: DITP「Higreen市場との果物輸入・販売促進に関する協議」(2026年9月19日、タイ語。取り扱い量は同局が紹介した市場側の情報)
そのほかのニュース
行政手続きで提出する58種類の書類、機関同士のデータ照会へ
政府は9月15日、行政機関がすでに保有する情報を連携させ、窓口での書類提出を減らす方針を示した。対象には身分証、住民登録、土地の権利関係の書類に加え、法人証明書も含まれる。
使うのは、政府機関がデータを交換するGovernment Data Exchange(GDX)。対象58種類のうち31種類はデータを利用できる状態にあり、関係機関で6か月〜1年以内に活用を進める。残る27種類も1年以内の接続を目指す。
企業の総務・管理部門に関係する点は、法人などの情報を提出先の機関が照会できるようになることだ。今回は接続と窓口運用を整える段階で、163機関が準備状況や関連規則を見直す。すべての手続きで直ちに書類が不要になるわけではなく、各窓口の対応開始に合わせて運用が切り替わる。
出典: タイ政府広報局「GDXによる58種類の行政データ連携」(2026年9月15日、タイ語)
シリキットダムの発電機を更新。約31年使った設備を、さらに30年以上運転へ
政府は9月15日、タイ発電公社(EGAT)が行うシリキットダム水力発電所の第4号機の改修を承認した。投資枠は約20.9億バーツ。北部ウッタラディット県にある同ダムは、灌漑、治水、発電を担い、125メガワットの発電機を4基備えている。
第4号機は使用開始から約31年が経ち、部品の劣化に加えて、補修用部品を調達できない設備もある。水車、発電機、制御装置など必要な機器を更新し、30年以上の延命を目指す計画だ。
年間発電量は2億4,242万キロワット時から2億5,128万キロワット時へ増やす想定で、増加幅は約3.7%となる。大型の発電能力を新たに加える投資と比べ、既存設備を使い続けるための更新に重点を置いた事業である。
出典: タイ政府「シリキットダム水力発電所第4号機の改修承認」(2026年9月15日、タイ語。発電量の増加率は公表値から計算)
木曜の「今週の分析」
タイとマレーシアは、海底の境界を決めずにどうガスを開発したのか
海底の権利について両国の主張が重なる場所で、企業は誰と契約し、開発費をどう回収するのか。今回の35年契約を理解するには、政府同士の合意から一段下りて、お金とガスの流れをたどる必要がある。
木曜の分析では、開発を認める共同機構、費用を負担する企業、ガスを買う会社、パイプラインへの出資を整理する。「50対50」という同じ数字が、国同士、企業同士、利益の分与でそれぞれ何を意味するのかも、収入の配分例で説明する。
さらに、ガスの供給が止まった際にタイ南部の発電所が使った代替燃料と、マレーシアの供給障害に共同パイプラインで対応した実例を読む。外交上の合意が、タイで事業を支える電力の燃料へどうつながっているのか。新契約の発表だけでは見えにくい、長年の共同事業の中身を掘り下げる。