8月第2週は、ホテルや商業施設の4〜6月決算が公表された。宿泊単価の低下が見られる会社でも、新しい低価格ホテルを増やした影響と、既存ホテルの動きは異なる。商業施設では、新規開業に加えて既存店の賃貸収入も業績を支えた。
政策では、国内旅行の支援条件や、家族のケアと仕事の両立に向けた制度の検討が進んだ。生産者物価、上半期の貿易統計、翌週の首相外遊の予定も取り上げる。
1|エラワンのタイ事業、平均宿泊単価は低下。既存ホテルでは上昇
ホテル会社エラワン・グループが8月13日に4〜6月決算を発表し、14日に訂正版を公表した。タイ国内のホテルの平均宿泊単価は1,725バーツで、前年同期比2%減。稼働率は76%だった。
会社が単価低下の理由として挙げたのは、低価格ホテルの比率が高まったことだ。2025年4月1日以降に開業したホテルを除くと、既存ホテルの平均単価は1,797バーツで、前年同期比2%増だった。全体平均が下がったからといって、既存ホテルが一斉に値下げしたとは読めない。
同社の低価格ブランド「HOP INN」のタイ事業は、客室数が前年の5,329室から5,792室へ増え、営業収入は13%増加した。新規ホテルを除いた収入増は3%。既存施設での伸びと、新規出店による上積みの両方があった。
一方、マイナー・ホテルズは8月10日の決算発表で、タイの高級ホテル群のRevPARが7%増えたと説明した。RevPARは、空室を含めた販売可能な客室1室当たりの客室売上で、このホテル群では主に宿泊単価の上昇が寄与したという。
高級ホテル群と、低価格ホテルまで含むタイ国内ホテル全体では対象が違う。各社の数字を順位付けするより、どの価格帯・施設で何が売上を支えたかを見る必要がある。
出典: The Erawan Group「Management Discussion and Analysis 2Q26」(2026年8月14日訂正版、英語、pp.2・8)、Minor Hotels「Q2決算発表」(2026年8月10日、英語)
2|国内旅行支援「タイ・ティアオ・タイ・プラス」、宿泊費支援などを官民で協議
タイ観光スポーツ省は8月10日、民間事業者との会議で「タイ・ティアオ・タイ・プラス」の条件を協議した。11日の政府発表によると、参加条件、適切な実施時期、宿泊費を支援する方法などが検討対象となった。
国内での旅行や支出を促すとともに、運営費の負担が重い小規模事業者や地域の観光関連産業へお金を届ける狙いがある。同日の別の会議では、飲食以外のサービスも支援する案や、クルンタイ銀行の決済アプリ「パオタン」を使う構想が示された。
これは、飲食店などでの買い物を補助する「タイ・チュアイ・タイ・プラス60/40」とは別の、国内旅行を対象とする構想だ。今週の新しい材料は、旅行支援の具体的な条件と実施時期を官民で協議したことである。
予算の財源や詳細条件は、財務省との調整などを経て正式に発表する段階だった。現時点で旅行者が申し込める制度として紹介したり、補助額を確定したものとして見込んだりすることはできない。
出典: タイ政府・観光スポーツ省「国内旅行支援の官民協議」「観光支援策と決済手段などの検討」(いずれも2026年8月11日、タイ語。会議は8月10日)
3|CPNの賃貸・サービス収入は8%増。新規施設と既存店の両方が寄与
商業施設大手Central Pattana(CPN)は8月10日、4〜6月期の決算を公表した。総収入は131億500万バーツで、前年同期比8%増。主力の賃貸・サービス収入は115億3,000万バーツとなり、同じく8%増えた。
会社は、5月に開業したCentral Khonkaen Campusに加え、2025年後半に開業したCentral ParkやCentral Krabiの寄与、改装を終えた施設の稼働率改善を挙げている。既存施設の賃貸収入も伸び、来館者数やテナント売上の増加、店舗構成の見直しが支えたと説明した。
賃貸収入は、入居する小売店や飲食店の売上そのものではない。CPNが受け取る収入には、新しい賃貸面積や入居の進展も影響する。今回の8%増を、そのままタイの消費全体や既存テナントの売上の伸びに置き換えることはできない。
商業施設とコミュニティーモールの平均稼働率は91%で、前年同期と同水準だった。会社は、改装を終えたCentral PinklaoやCentral Chaengwattanaでも稼働率が上がったと説明している。
出典: Central Pattana「Management’s Discussion and Analysis 2Q26」(2026年8月10日、英語、pp.1–4)
数字で見る|7.3%
7月のタイの生産者物価指数(PPI)の前年同月比上昇率。商務省が8月11日に公表した。
PPIは、生産者が商品を販売する段階の価格を測る指数だ。家計が店頭で買う品物やサービスの値動きを表す消費者物価指数(CPI)とは異なる。7.3%は「家計の生活費が一律に7.3%上がった」という意味ではない。
分野別では、農水産物が8.0%、鉱産物が21.8%、工業製品が6.9%上昇した。商務省は、原油・天然ガスなどのエネルギー価格、輸入原材料への為替の影響、一部農産物の供給条件などを挙げた。
生産者側の販売価格が高くなっても、材料やエネルギーの仕入れ費用も増えていれば、利益が同じだけ増えるわけではない。価格が上がった品目と、買い手としてその価格を負担する業種を分けて読むための数字である。
出典: タイ商務省「2026年7月の生産者物価指数」(2026年8月11日、タイ語)
そのほかのニュース
上半期の輸入は38%増。輸出の伸びを上回る
タイ商務省貿易交渉局が8月11日に公表した1〜6月の統計によると、輸出額は1,967億4,200万米ドルで、前年同期比18%増だった。輸入額は2,284億8,600万米ドル、38%増。輸出も拡大したが、輸入の伸びの方が大きく、差し引き317億4,400万米ドルの輸入超過となった。
同局は、関税などの貿易障壁を減らす自由貿易協定(FTA)をタイと結ぶ18カ国との取引も集計した。これらの国への輸出は13%増、輸入は30%増で、いずれも世界全体との取引の伸び率を下回った。
18カ国が占める割合は、タイの輸出の53.6%、輸入の60.5%。輸出先としてだけでなく、輸入元としても大きな比重を持つ。これは取引相手の構成を示す数字であり、FTAの優遇関税を実際に利用した取引の割合ではない。
出典: タイ商務省貿易交渉局「2026年1〜6月の主要相手国・FTA相手国との貿易統計」(2026年8月11日、タイ語、米ドル建ての集計)
家族のケアを支える休暇や柔軟な働き方、関係省庁が制度を検討へ
8月14日、国家家族政策・戦略委員会は、家族のケアのための休暇をより広く支える方向を承認した。公務員などの休暇規定に加え、労働保護法制の見直しを労働省と検討し、休暇を取る従業員への金銭的な支援を社会保障制度でどう扱うかも調整する。
従業員向けの相談体制や、在宅勤務など柔軟な働き方も挙げられた。働く人自身の勤務だけでなく、子どもや高齢の家族を支える時間をどう確保するかが政策課題になっている。
今回承認されたのは検討の方向であり、すべての従業員に新たな休暇日数が直ちに付与されたという発表ではない。企業の就業規則へ反映する具体的な義務が確定した段階とは区別したい。
出典: タイ政府「家族のための休暇・地域のケアなど3方針を承認」(2026年8月14日、タイ語)
豪州・ニュージーランド訪問を発表。民間企業との交流も予定
政府は8月14日、アヌティン首相が17〜20日にオーストラリア、20〜22日にニュージーランドを公式訪問すると発表した。
オーストラリアでは、タイ投資委員会(BOI)と同国の貿易投資促進機関Austradeが企業交流を準備する。クリーンエネルギーや技術分野の投資、研究成果の事業化などが協議の対象だ。ニュージーランドでは食品や小売などの市場開拓とともに、観光企業Skyline Enterprisesや家電のFisher & Paykelとの協議を予定している。
バンコクとオークランドの直行便の再開も働き掛ける方針が示された。いずれも訪問前の議題・計画で、投資契約の成立や航空便の再開が決まったという発表ではない。
出典: タイ政府「首相のオーストラリア・ニュージーランド訪問予定」(2026年8月14日、タイ語)
木曜の「今週の分析」
ホテルを増やすエラワンは、なぜ営業減益になったのか
ホテル会社エラワンは、4〜6月期に前年より7,400万バーツ多くの収入を上げた。タイの低価格ホテル「HOP INN」も13%増収だった。その成長が、営業利益では7%減となって表れた。増えた収入は、どこへ向かったのか。
決算を分解すると、タイのHOP INNの増収の約8割は、新しいホテル群が生んだものだった。出店が収入を作る一方、グループ全体では運営費や設備の償却費も増えている。さらに日本とフィリピンの事業、借入費用の削減が重なり、営業減益と純利益の増加が同時に起きた。
木曜は、この7,400万バーツの行方を、国別の収入と費用の内訳から追う。センタラで新しいリゾートの損失が縮小した例も合わせ、ホテルを増やしてから利益を厚くするまでの過程を読む。集客が好調というだけでは分からない、ホテル拡大の採算を具体的な数字で考える。