輸出代金をドルで受け取り、そのドルを海外の仕入先へ払う。バーツへ両替する手間は省けるが、外貨口座から送金するときにも銀行へ手数料を払う。

10月1日、この手数料について、個人と中小企業に適用する最低料金の上限300バーツ、最高額2,000バーツの基準が加わった。ICBCタイのドル送金で比べると、500万バーツ相当を送る際の手数料と受付料の合計は、7月の料金で6,750バーツ、10月の料金で2,500バーツになる。料金表から計算した差は4,250バーツ。大口の取引には上限が効き、小口では最低料金の引き下げが支払額を変える。123

両替をしない送金にも、なぜ手数料がかかるのか

外貨預金口座は、ドルや円をその通貨のまま保管する口座で、英語ではFCD(Foreign Currency Deposit)と呼ぶ。輸出代金の受け取りと輸入代金の支払いが同じ通貨なら、受け取った外貨を次の支払いに使える。バンコク銀行も、事業者が外貨の収入・支出を管理する口座として案内している。4

この口座から外貨を送るときに、銀行が請求することがあるのが、commission in lieu of exchangeという手数料だ。中央銀行は、銀行が通貨の売買・両替をしないことで得られなくなる収入を補う費用と定義している。外貨で貿易代金を決済する際などに、別の名前で呼ばれる同種の費用も含む。1

バーツからドルを買う場合は、銀行が提示する両替レートが支払額に影響する。既に持っているドルを送る場合は、その両替を省き、外貨を動かす手数料を払う。外貨口座を使うと、売上をすぐバーツへ換えずに保管できるが、次の支払いにも費用がかかる仕組みだ。

元の料金から、7月・10月に何が変わったか

ICBCタイのドル送金について、銀行が公開している3つの料金表を比べると、変更は二段階に分かれている。以下はバーツで示された最低・最高額の条件だ。523

  • 旧料金(2024年3月29日適用版): 送金額の0.25%、最低500バーツ、最高額の上限なし。
  • 2026年7月1日適用版: 料率が0.125%へ下がった。最低500バーツ、最高額の上限なし。
  • 2026年10月1日適用版: 料率は0.125%。最低300バーツへ下がり、最高額2,000バーツの上限が付いた。

7月に変わったのは料率、10月に変わったのは最低料金と最高額だ。送金受付料は、いずれの料金表でも別に1件500バーツ。満額を相手へ届ける場合の追加料金も、別の欄に残っている。

中央銀行の規則も、7月から料率を0.125%以内にし、10月から個人・中小企業の最低料金と最高額に基準を加えている。300バーツは、銀行が最低料金を設ける場合の上限なので、より安い最低料金を設定することもできる。1

日本人や日系企業も、対象の取引と顧客区分を満たせば適用される。国籍や法人を設立した国による一律の除外はない。中小企業かどうかは各銀行の顧客分類に従い、銀行にはその定義を顧客へ説明する義務がある。外貨の紙幣を使う取引はこの項目の対象から外れ、同じ銀行内の口座間移動ではこの手数料を徴収しない。1

同じ金額を送ると、支払額はいくら変わるか

ICBCタイの外貨口座からドルを送る例で、7月と10月の料金を比べる。表の金額はすべてバーツ。送金額をバーツへ換算したと仮定し、手数料に送金受付料500バーツを加えて計算した。23

送金額(換算) 受付料込みの合計
10万 7月:1,000
10月:800
100万 7月:1,750
10月:1,750
500万 7月:6,750
10月:2,500

料金表のバーツ表示の条件による編集部の計算。受取側・中継銀行などの追加費用は含めていない。

10万バーツ相当の送金では、0.125%を掛けた125バーツより最低料金の方が高くなる。最低額が500バーツから300バーツへ下がった分、支払額は200バーツ減る。

100万バーツ相当なら、0.125%は1,250バーツ。最低額にも上限にもかからないため、10月の改定で支払額は変わらない。500万バーツ相当では、料率を掛けた6,250バーツの代わりに上限の2,000バーツが使われ、4,250バーツ下がる。10月の料金では、24万バーツ相当まで最低額が使われ、160万バーツ相当で上限に達する。

支払いの回数も費用を変える。10月の料金で、同じ100万バーツ相当を10万バーツずつ10回送ると、手数料と受付料は合計8,000バーツ。1回で送る場合の1,750バーツとは6,250バーツの差になる。最低料金と受付料が毎回かかるためだ。実際に支払いをまとめられるかは、請求書や取引先と合意した支払日による。

受取人へ満額を届ける条件には、追加費用がある

海外送金は、送り手の銀行から相手側の銀行へ渡る過程でも費用が生じる。取引先が請求額をそのまま受け取る必要がある場合、送り手がその分を負担する条件が、送金時の料金に加わる。

ICBCタイのドル送金では、受取人へ満額を届けるための追加料金は800バーツまたは30ドル。円送金は送金額の0.05%、最低5,000円と通貨ごとに条件が異なる。この費用は、先ほどの表にも2,000バーツの上限にも含まれていない。3

受付料は、銀行や利用経路によっても変わる。クルンシィ銀行の事業者向けオンラインサービスは、海外送金の受付料を通常350バーツ、2026年中の新規利用者向けの条件を満たす場合は250バーツと案内している。この特典の利用期限は2027年3月31日。別の銀行の料金を比べる場合は、こうした受付料の設定も総額の差になる。6

10月の改定で、ICBCタイのドル送金は、小口の最低料金が下がり、大口には手数料の上限が付いた。料率を掛けた額がその間に収まる取引は、7月と同じ料金になる。上限に達する大口の送金では、2,000バーツの手数料に、1件ごとの受付料と満額着金の条件に応じた費用を加えた金額が、送り手の負担になる。

出典・注記

  1. タイ中央銀行(BOT)「銀行サービスと手数料の基準・告示23/2569と付属Q&A」(2026年6月2日付送付文書、告示は5月28日付、6月1日官報掲載、タイ語)。PDF4〜5ページの定義、8ページの表4.3.1(3.3)と脚注7、10ページの段階的適用日、12ページQ&A1〜2。最低料金300バーツは各銀行が最低料金を設ける場合の上限。紙幣の取引と同じ銀行内の口座間移動、外国籍・外国法人とSME区分も確認。 2 3 4

  2. ICBCタイ「外貨預金口座の入出金手数料・Table 5(2026年7月1日適用)」(英語)。PDF1ページのドル送金・出金欄は0.125%、最低500バーツまたは10ドル、最高額の上限なし。受付料1件500バーツ。表と差額は、この版と10月版の同条件による編集部の計算。 2 3

  3. ICBCタイ「外貨預金口座の入出金手数料・Table 5(2026年10月1日適用)」(英語、10月12日確認)。PDF1ページのドル送金・出金欄は0.125%、最低300バーツ、最高2,000バーツ、受付料1件500バーツ。ドルの満額着金の追加料金、円送金の条件は銀行の現行料金ページとも照合。表と回数比較はバーツ換算額を仮定した編集部の計算。 2 3 4

  4. バンコク銀行「事業者向け外貨預金口座」(公表日の表示なし、英語、2026年10月12日確認)。外貨収支の管理、タイ法人・外国法人向け口座の役割。

  5. ICBCタイ「外貨預金口座の入出金手数料・Table 5(2024年3月29日適用)」(英語)。PDF1ページのドル送金・出金欄は0.25%、最低500バーツまたは10ドル、最高額の上限なし。受付料1件500バーツ。本文はバーツ表示の条件を比較。銀行の公式料金ページの過去版一覧から取得し、適用日と表を画像で確認。

  6. クルンシィ銀行「Krungsri Biz Onlineの料金・新規利用者向け特典」(タイ語、2026年10月12日確認)。2026年中の新規利用者向け送金受付料、特典の利用期限。通常350バーツのSWIFT送金と、別商品のGlobal Transferを分けて確認。